第22回<昭和11年>全国中等学校野球選手権大会

紀和大会

<準決勝> 和歌山師 8-24 和歌山商
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
和歌山師 1 4 0 1 0 1 1 0 0 8
和歌山商 3 3 0 0 1 0 2 12 × 24

 和歌山師は最後に刀折れ矢つきて潰滅したが、前半に和歌山商が対海南中との再試合で疲れているのに乗じ、3回より吉川捕手とプレートに送らす苦しいシーソーゲームを演じ、試合は半ばを過ぎても勝敗の予断を許さない程だった。和歌山商は再試合の疲労のため、小林・中谷両投手はストライクを投げることすら困難な程苦戦に陥ったが、後半ビッグ4の偉力を発揮して8回に至って敵を粉砕したのは流石であった。

<準決勝> 海草中 9-0 和歌山工
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
海草中 0 0 0 3 2 0 3 1 0 9
和歌山工 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

 和歌山工・喜多投手懸命の投球も海草中慣れるに従い宮本の二塁打を初め11安打を放ち、毎回に着々と得点を重ね、一方宮本は好投して3安打を与えたのみシャットアウトせしめた。

<決勝> 和歌山商 9-2 海草中
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
和歌山商 0 0 0 3 0 6 0 0 0 9
海草中 0 1 0 1 0 0 0 0 0 2

 優勝候補和歌山中を仆した他、楽勝余分のある海草中に対して連日苦戦を重ねた和歌山商は不利と思われたが、この日は見違える程の元気で不調を伝えられた小林投手は見事立ち直って完投したのに反し海草中・島投手以外の不調で4回、和歌山商は小林右翼線に二塁打し味村三匍一失に生き一死後、金・太田(富)の適時安打に一挙3点を入れ満場騒然、6回更に無死満塁の好機を迎えたので海草中ベンチはたまりかねて島を退け宮本投手に代えたが、勢いづいた和歌山商の打力は抑える術なく打順一廻して3点入れて大勝した。和歌山商・小林投手は緩曲球で好投し珍しく一試合完投して、全く予想を覆して大番狂わせを演じた。

<紀和決勝> 和歌山商 5-3 郡山中
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
和歌山商 0 3 0 1 1 0 0 0 0 5
郡山中 0 0 0 0 2 1 0 0 0 3

 郡山中・中田投手前半球威なくカーブも曲らず早くも5点リードを許し、一方打力不振で5回漸く小川中前に最初の安打を放ち四球、野選に無死満塁、和歌山商はここで中谷に交代せしめて次打者を三振に討ち取り、同時にうまく一塁牽制に走者を追い出し三塁走者を重殺、危機を切り抜けたかに見えたが、主将・中垣に右前安打を許して2点までに肉迫したが、打力に乏しく最後まで今一息中谷を打ち込めず、和歌山商は5年振りに紀和代表の紫旗を手にした。

全国大会

<2回戦> 和歌山商 10-0 福井商
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
和歌山商 2 0 1 2 1 1 0 1 2 10
福井商 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

 先攻の和歌山商、制球に苦しむ敵投手から四球2と小林の投手強襲安打で2点先取、意気揚がり、3回二死満塁に金左前安打を放ち中谷も本塁を働いて憤死したが1点を加う。更に4回無死2走者を出し太田義三振、吉川中飛後、中谷左中間を抜く三塁打に2者を迎え入れた他、7回を除いて毎回得点を重ね得点差を開いて楽勝した。
 小林投手は見事ノーヒットノーランの記録を残して大勝した。

<3回戦> 和歌山商 1-9 岐阜商
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
和歌山商 0 1 0 0 0 0 0 0 0 1
岐阜商 0 5 0 0 1 0 0 3 × 9

 当大会随一の優勝候補大豪の岐阜商に対して和歌山商は元気一杯立ち向かったが1回二死満塁となりながら入らず、2回和歌山商・上原四球、二死後、佐伯右中間に三塁打を放ち1点を先取した。その裏、岐阜商俄然猛打を振い野村遊撃強襲、足に当たって外らす間に二塁に達し森田の安打で生還。その後満塁となり近藤の三遊間安打と松井の右中間二塁打、押し出しの1点で一挙5点を獲得、5回また1点を加え和歌山商・小林投手退き中谷投手となり防戦に力む。6回和歌山商一死後、中谷の左翼線二塁打、小林中前安打に続いたが、味村の投匍にダブられ好機を逸したうえに8回、2走者を置いて加藤(三)に中越三塁打を浴び野手失に3点を与え敗退した。岐阜商は優勝候補の噂に違わず堂々と打っては12安打を放ち守っては1失を記録せるのみ、この大豪を向うに廻して甲子園の花と散った和歌山商の敗戦は是非もない。