第25回<昭和14年>全国中等学校野球選手権大会

紀和大会

<準決勝> 海南中 16-0 箕島商
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
海南中 0 0 1 2 0 6 3 0 4 16
箕島商 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
<準決勝> 海草中 6-1 和歌山商
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
海草中 0 1 0 2 0 0 1 0 2 6
和歌山商 0 1 0 0 0 0 0 0 0 1

 和歌山商は2回二走者を置いて遊匍すれば下痢をして練習を休んでいた竹尻の一塁暴投を誘い1点を入れ、意気軒昂、その後中野投手よく頑張って善戦したが、海草中あわてず回を追うに従って地力を発揮して、真田・竹尻の長打を始め8安打を放って制勝した。海草中では2年生の若漢真田の三塁打、二塁打各1本の猛打振りが目立っていた。

<決勝> 海南中 1-9 海草中
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
海南中 0 0 0 0 1 0 0 0 0 1
海草中 2 0 2 0 0 2 1 2 × 9

 海南中の善戦を期待されたが、海草中は山崎投手を攻略して痛烈な当たりを見せ着々得点を重ねて完勝した。即ち1回海草中第一打者古角遊撃を誤らせ、竹尻右翼安打、加茂バントに送った後、島の適時安打で2点、3回には加納安打、バントに二進後、竹尻三塁打して1点、続く加茂は一度スクイズ失敗して竹尻を殺したが憤起して中堅越本塁打を放つなど快調なスタートを切った。後半に至るも攻撃の手を緩めず、一方島は制球力も豊かで昨年以来の不安を解消した素晴らしい出来を示した。
 法大・滝野選手を招きその活躍を期待された海南中は、僅に2安打の貧攻振りで意気揚がらず良いところなく敗れた。本大会を通じて海草中は3試合に安打32本、3割2分の打撃率を挙げ従来どちらかといえば守備の海草中といわれた汚名を一掃素晴らしい打力を示した。

<紀和決勝> 天理中 0-6 海草中
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
天理中 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
海草中 0 0 2 1 0 0 1 2 × 6

 前半天理中・福田投手の緩球を打ち悩んだ海草中は回を重ね慣れるに従って地力を発揮して小刻みに得点を重ね制勝した。海草中は上乗の出来栄えではなかったが7回8番打者宮崎、左翼金網越本塁打を放って気を吐いた。

全国大会

<1回戦> 嘉義中 0-5 海草中 

 嘉義中・酒見投手のカーブとシュートは鋭く、海草中打ち悩み、前半0-0の均衡を保ったが、後半やや疲労したのに乗じすかさず好打を浴びせ得点を重ねた。即ち5回、古角高目の球を左越二塁打し左前安打で出塁の志水を迎え竹尻も巧みに左前安打して古角生還、6回には島曲球の曲り鼻を左越大三塁打を放つなど猛打振りを示して勝利を確実なものとした。嘉義中は内外共堅実で見事なものがあったが、打力が島に奔弄され無得点に終わった。

<2回戦> 海草中 5-0 京都商
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
海草中 2 1 0 0 0 0 2 0 0 5
京都商 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

 京都商・神田投手は外角に速球を投げ込み忽ち古角・加茂を三振に討ち取り、花々しいスタートを切ったが余りに一本調子すぎ変化を欠いた為、竹尻、島に痛打を浴びその上致命的失策が連続して1、2回で早くも3点を与えた。定評ある竹尻・島に対し短兵急に攻め立てたのは拙かった。島は荒れ気味でしばしば四球で走者を出したが締る可きには締り、僅に2安打を許せるのみ、その後海草中は毎回走者を出しながらヒットエンドランを2回失敗し漸く7回古角のセーフティー・バントに機を作り真田、田中の好打で2点を加え快勝した。蓋し実力の差を示した、当然の勝利と言う可きであろう。

<3回戦> 米子中 0-3 海草中
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
米子中 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
海草中 0 0 1 2 0 0 0 0 × 3

 米子中・田中投手は長身より慎重に投げ下す直球に気合かかり攻撃も活気横溢して対高岡商とは見違えるばかりの元気さであった。
 海草中は3回裏、四球3と遊失に1点を先取、回を追うにつれ、打力は鋭鉾を現し4回に1敵失と古角・竹尻の安打に2点を加えて後半戦に進む。
 米子中は7回一塁失と安打に一死走二、三塁の好機をつかみ本塁も今一歩の間に臨むところまで進んだが、島の剛速球にバント失敗し頓挫した。海草中は好投とチームの洗練さを併せて3試合を0敗せしめ底知れぬ力を示して準決勝に勝ち進む。

<準決勝> 島田商 0-8 海草中
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
島田商 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
海草中 4 0 1 0 0 0 3 0 × 8

 島・安田両投手は中等球界一流の名投手で一日の休養に海草中の苦戦が予想されたが1回立ち上がりに古角に死球を与えて動揺したか、一死後竹尻、島を歩かせ真田、スクイズ失敗して古角憤死したが真田憤起中堅右に、田中中堅左に二塁打し宮崎左前安打して、一挙4点を入れ機先を制す。この大量得点に一言と投手交代せしめたが、島田商陣営早くも色を失い3回には安打真田、宮崎四球で一言退き再び安田の登場となったが、戦意を欠き、一方島の快腕はノーヒット・ノーランに加えて三振17という快記録を立て攻撃にあっては安田、一言を徹塵に打ち砕いて長短12安打を浴せて完勝した。

<決勝>
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
海草中 0 0 2 0 0 0 2 0 1 5
下関商 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

 1,2回波乱なく3回に入るや海草中・古角四球、加茂遊失、竹尻のバントに古角三封され島三振二死となったが、真田の中堅痛打、野手転倒する間に2者生還、友浦投手は4回より再び立ち直って慎重に投げたが7回漸く力尽きたものの如く、古角・加茂・島に集中安打され押し出しの1点を加えて大勢を決した。
 島の球威は特に鋭く無安打、無得点、僅に四球で2走者を出せるのみ、それも前者は二塁に刺され後者も挾殺されて1つの残塁をさえ止めなかった。
 斯くして17年振りに南海の地に大旆を飜えしたが、戦を交えること5度、総てを0敗に屠り許した安打僅に8、三振57準決勝、決勝を無安打に討ち取るという本大会未曾有の大記録を樹立した。一昨年以来苦戦を嘗めた島投手が撓まず3ヶ年の忍苦ここに報いられ、更に全員が島を扶けて鉄桶の守備を布き強烈な攻撃力を以って完勝した団結の力に弥讃したい。