第35回<昭和28年>全国高等学校野球選手権大会

県予選

 大会直前県下を襲った豪雨のため、未曾有の大水害を被り交通機関不通となって危ぶまれたが万難を排して開催、田辺など海路を渡って来和したが吉備高は被害甚大、選手の家庭にも羅災者があって棄権、日高川大氾濫で最大の被害を被った日高高は父兄の理解と激励に励まされ出場し元気一杯活躍。

<準決勝> 向陽 4-3 海南
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
向陽 2 0 0 0 0 0 1 0 0 1 4
海南 0 0 1 0 0 1 0 0 1 0 3

 向陽立ち上りよく攻め二死一、二塁に中谷左越大三塁打を放ち堂々2者を迎え向陽の意気上る。川端投手は余りに好球を揃え過ぎた。海南3回裏、無死で山東二塁打し一死後淡路のスクイズ成功して1点を返す。向陽は4回無死安打に出たが二盗失敗、5回にも二死満塁となりながら無為一方向陽坂田投手はサイドスローを交えて外角低目をつく直球とカーブがよく決まり向陽押し気味に見えた。反撃する海南は6回裏、一死2安打に走者を出すや、向陽は投手を二出川に切り換えたが土屋左前に安打して同点となり満場騒然、ラッキーセブンを迎え向陽は一死満塁となり捕手逸球に勝ち越し点を挙げ、その裏から再度坂田をプレートに送ったのが一応成功し最終回を迎えたが、海南先頭打者、土屋遊越安打し筒井の絶好のバントで土屋二塁に達しながらオーバーランして惜しくもアウト。しかし筒井敢然三盗し投手暴投に再度同点となり延長戦に持ち込む。向陽は10回表、二死ながら中谷右前安打し栗栖左越三塁打を放ち決勝点を挙げ遂に強豪海南を降ろした。流石にこの試合準決勝にふさわしく好試合だった。

<準決勝> 桐蔭 6-2 日高
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
桐蔭 1 0 1 1 0 3 0 0 0 6
日高 0 0 0 0 0 1 0 0 1 2

 桐蔭笹本は意表をつく直球を大胆に投げ込み悠々ピッチングを示したのに反し日高土屋は制球力無く苦しい投球であった。桐蔭の1回田中四球、捕手失で二進、一死後、連続安打で先制点を挙げさらに3回二死後から大浦の左前安打で1点、4回にも原田中前安打、二盗した後田中の二塁打で1点と着々と得点を重ね6回2安打、一塁失と盗塁、捕手エラーを織りまぜて3点を入れ大勢を決した。一方日高は笹本を攻略できず2点を返しただけに終わった。

<決勝> 向陽 2-1 桐蔭
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
向陽 0 1 0 1 0 0 0 0 0 2
桐蔭 0 1 0 0 0 0 0 0 0 1

 2回向陽二出川テキサス性安打を放ち野手の動作緩慢に乗じ一挙に二進、中谷四球栗栖のバントで二、三進し大垣内のスクイズで1点、中島はスクイズ失敗して中谷狭殺されたが先取点を挙げ意気揚がる。3回にも好機あったが入いらず、その裏桐蔭奮起して一死後、福田右越三塁打し田中の左邪飛に本塁をついて同点、向陽も4回二死満塁に死球を得て押し出し再度リードを奪った。
 向陽坂田は滑り出し上出来でなく前途を危ぶまれたが先取点に気をよくして好投し桐蔭笹本はサイドスローに苦心の投球を続けたが前半7安打を浴び毎回走者を出して脅かされた。
 後半に入り向陽攻撃の手を緩めず押し気味で桐蔭1点の奪回に苦心したが3安打に押えられた3回以降殆どチャンスなく結局押し出し点が物をいって向陽初の優勝を遂げた。

<紀和決勝> 向陽 0-6 御所実
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
向陽 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
御所実 0 0 0 6 0 0 0 0 × 6

 スコアーの開いた程の実力の差は認められずむしろ向陽は前半押し気味だったのに田原投手を打ち込めず殊に2回無死満塁に得点するに至らなかったのであせりが見られた。
 一方、御所実は4回迎えた無死満塁の好機に無造作に投げた第一球を島村が前進守備の二塁手の左を痛烈に抜いて均衡を破り更に田原の三塁打と野手失で矢継ぎ早に攻め立て大量得点を挙げその蓋然性儘押し切った。
 この坂田投手を退けたのも結果からみて稍々早きに過ぎた嫌いがあり中堅手が間に合わぬのに三塁に送球後逸するなど混乱したのは遺憾であった。