第52回<昭和45年>全国高等学校野球選手権大会

県予選

<準決勝> 市和商 8-0 新宮商
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
市和商 6 0 2 0 0 0 0 0 0 8
新宮商 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

 市和商は、打ちに打ちまくり、何とか食下がろうとする新宮商を一歩も寄せつけなかった。
 市和商は、初回、新宮商神田投手の立上がりを攻め打者一巡、大量6点の先制点をあげ、試合の行方を決めた。この回伊原木が短打で出たあと、続く高出、田中、陽山が連続3本の三塁打を放ってまず3点。さらに井口、山本の長短打、本山の犠打などで得点を重ねた。3回には4本の短打でダメ押しの2点を追加した。その後は神田とかわった山田に押えられ、5安打と打棒が振わなかったものの、そのまま押切った。
 新宮商は、市和商の投手岩井と、8回からかわって登板した戸上に押えられ手が出なかった。放った安打はわずか3本。
 24日準々決勝の対向陽戦で延長13回まで投げ抜いた神田は疲れたせいか、この日、得意の外角低目が決らず、苦しむところを市和商にねらい打ちされたのが敗因といえよう。

<準決勝> 和工 1-2 箕島
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
和工 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1
箕島 0 0 0 0 0 0 0 2 × 2

 両チ-ム共投手の好投で中盤戦まで淡々と運び、7回まで双方ほとんど三者凡退、結局、8回に1点先行された箕島が、この回逆転の2点をあげて和工を振切った。ねばりの箕島を存分にみせた試合だった。
 箕島は1、2回に安打を出し、幸先のよいスタ-トを切ったが得点に結びつけることができず、しかも3回から6回まで三者凡退。
 先得点をとられた8回裏、東田が左翼線ギリギリの二塁打で出塁、つづく中村の三塁打で生還、同点とし、二死後、田中の左前安打で中村もかえって決勝の2点をあげた。
 和工は2回から7回まで3者凡退に押えられたが、8回、3安打を奪って山下が生還、貴重な先取点をあげた。だが、あともう一発がでなかった。

<決勝> 市和商 0-7 箕島
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
市和商 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
箕島 0 0 2 0 2 0 0 3 × 7

 箕島は1、2回、長短打を放ったが、得点にならず、市和商の岩井投手を攻めあぐんだように見受けられた。しかし、3回、2点を先取して主導権をにぎった。
 この回箕島は二死のあと川端が死球で出塁、この機会をうまく生かした。続く在本が中前にはじきかえして走者一、二塁とし、当っている島本を迎えた。岩井投手が勝負にいどんでの2球目が、快音とともに大きく右越えの三塁打、これで一拳に2点。
 岩井投手の失投というより島本の打撃力をほめるべきだろう。
 勢いづいた箕島は5回、田中の三ゴロが左前安打で出塁の中を殺す結果となったものの、田中は川端の中前安打で三進、島本は四球で満塁、このとき、続く森下の左前安打で田中、川端が相次いで生還。試合の行方をかためた。
 さらに8回、岩井投手にかわった山本投手を果敢に攻めて、ダメ押しの3点を追加した。チャンスを生かしたうまい試合運びだった。
 一試合ごとに打棒をふるってきた市和商は1回、田中が左中間に三塁打を飛ばしたものの、結局、島本投手に三振10個を奪われ、散発4安打に押えられた。
 総合力からみると当然ともいえようが、あくまで堂々と強豪箕島にぶっつかっていった市和商の気力も評価されなければなるまい。

<紀和決勝> 箕島 5-4 郡山
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
箕島 0 1 0 0 0 2 0 2 0 5
郡山 0 1 0 0 1 0 0 2 0 4

 1点リ-ドされた箕島は6回から猛反撃に出た。この回、1番打者田中、ハッシとたたいた第1球は左前へきれいな安打となった。2番打者川端は送りバントしたが、一塁線への飛球で倒れた。一死となったものの田中は二盗、さらに3番打者在本の時に三盗、チ-ム一の俊足を生かしての快走にスタンドはわいた。
 田中は在本が放った中前安打で生還、同点、郡山ベンチはさすがに焦りの色がみえ、投手を津山から笠松にかえた。チャンス。一段攻勢を強める箕島、打順はちょうど当りに当たっている4番打者島本。
 郡山にやや右寄りにシフト。深い守備を敷いたが中前へうまく打って一死走者一、二塁、森下が右飛に倒れたが続く東田の中前安打で在本がかえって逆に1点リ-ドした。
 箕島の猛攻は8回にも、この回も打順よく、先頭打者川端、ねばりにねばって四球。続く在本は投手ゴロだったが、それをとろうとした笠松投手があせったのかボ-ルをはじいて無死一、二塁、さらに相手にエラ-で二、三塁へ進んだ。島本が拍手を浴びてバッタ-ボックスへ。リ-ドを大きくとった在本が笠松の好けん制球で刺されたものの、敬遠されて出塁した島本はすかさず二盗。一死二、三塁、この好機に森下が3球目を左越えにはじきかえし二塁打、2者生還、勝負に決ったかのようにみえた。
 箕島は最終回、郡山の必死の食下がりを受けた。一死後エラ-で出た阪本が、二盗に成功した。あるいは一打同点も・・・・・・。1番打者植田、5球目、快音を残して三塁右へライナ-性のゴロ、三塁手森下が横っとび球を押えて二塁走者をけん制して一塁へ。2死だ。続く福西に死球を与えたが、藪内を二ゴロに打取り振り切った。8回から急にくずれて四死球が目立ちはじめ、好守備に救われたエ-ス島本は試合終了後”みんなに助けてもらった”とひとこと。

全国大会

<1回戦> 北見柏陽 0-8 箕島
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
北見柏陽 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
箕島 0 1 2 0 3 2 0 0 × 8

 春、夏連続優勝をめざす箕島が島本の投打にわたる活躍で初戦をものにした。島本は2回に低目を力強く右へ打ち返して先制点の足場をつくった。このあと東田の安打、死球で一死満塁、中谷は二ゴロで三塁走者を本封、二死満塁となったが、2-1と追込まれた中の4球目がヘルメットをかすめる死球となって押出しの先取点をあげた。
 島本は3回にも、一死一塁で外角よくの高目を左中間へ深々と三塁打し、森下とのスクイズでホ-ムを踏んだ。早くも3-0.。
 試合の主導権を握った箕島はそれまでのボール打ちも少くなり、のびのびと攻め、そして守った。5回島本の四球のあと2安打、盗塁、失策などで3点を加えて大勢を決め、6回には島本が右中間へ2本目の三塁打を放つなどで点差を大きくした。
 投げる島本は内角に速球を決めて散発の4安打、ピンチらしいものは5回、安打、四球の一死一、二塁だけで、それも次打者をゆるい二直の併殺に打ちとり、三塁を踏ませず完封した。
 北見柏陽は敗れたが強敵を向うにまわし少しもひるむところなくよく戦った。大山投手はシュ-トを多投し、コ-ナ-を入念について球威不足をおぎなって箕島打線と対したが、2回そのシュ-トが、不運にも2つの死球を招いてしまった。また攻撃では、バットを短かく持ち、島本の速球に食いついたが、力不足からいいコ-スに球はとびながら、鋭さがいまひとつなかった。

<2回戦> 箕島 1-6 岐阜短大付
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
箕島 0 0 0 0 1 0 0 0 0 1
岐阜短大付 2 0 0 0 4 0 0 0 × 6

 5回箕島が1点を返して1-2。その裏の攻防がこの試合のヤマ場だった。岐阜短大付は先頭大野が左翼金網にワンバウンドでぶっつける二塁打を放った。北浦の三塁前バントは投手島本と三塁手森下が譲り合って安打。大野は三塁をオ-バ-ランして、島本のうまい擬投に三本間できょう殺され、そのすきに二塁へ走った北浦は捕手小南の送球に刺されたかにみえた。が、タッチをあせった遊撃手の田中がポロリと落球、あやうく命拾いした。この走者を残したことが箕島の致命傷となった。
 岐阜短大付は遠藤三振のあと、桐山が、けん制球に入った二塁手の逆をつく安打して一、三塁。小椋は初球の内角球を左中間の金網に直接ぶっつける大二塁打を飛ばして2者を迎え入れた。あとはセキを切ったような速攻、小椋が暴投で三進すると、高橋は中間二塁打。篠田は島本の左をゴロで抜き、大塚のライナ-が快音を残して右前へ飛んだ。雨にうたれ、マウンドで放心したように立っている春のヒ-ロ-が無残だった。
 島本は立ち上がりから制球に苦しんだ。1回無死からいきなり2つの四球を与え、岐阜短大付のたくみなバント攻めにあって2点を失った。5回中村の三塁打と小南の左犠飛116落球117で1点を返し、味方がこれから反撃というときにこのくずれである。春、夏優勝に118投げる方119の島本が不安といわれたが、それが現実となった。岐阜短大付は、左投手島本の内角球を強引にひっぱる打法で堂々と打ちくずした。島本を中心とする強打箕島を1点に押えた湯口のピッチングもまたみごとだった。
 よく球を選び、くいさがってくる箕島打者に根気負けせず投げとおした気力。特に島本には内外角低目へ速球、カ-ブを決めて乗じるスキを与えなかった。島本のバットを封じられると、箕島の得点力は半滅する。湯口の力投が岐阜短大付の第一の勝因といっていいだろう。