第75回<平成5年>全国高等学校野球選手権

和歌山大会

<準決勝> 桐蔭 1-2 智辯和歌山
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
桐蔭 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1
智辯和歌山 0 2 0 0 0 0 0 0 × 2

 智辯和歌山・有木と桐蔭・出口の投げ合いで緊迫した投手戦となったが、智辯和歌山が井口の好走塁などで辛勝した。1点を先制された2回、一死一塁に園山の右中間を抜く二塁打で走者井口が間一髪生還し同点。さらに西中の左越え二塁打で園山がかえり逆転した。有木は7回以外は毎回走者を出しながらも要所をおさえ、1点差を守り切った。
 桐蔭は1回、四球の中井が紀本・出口の連続安打で生還し素早い先制。3回にも2四球などを足がかりに迎えた二死二、三塁の反撃機をつぶしたのが惜しまれる。

<準決勝> 和歌山工 6-3 箕島
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
和歌山工 0 1 0 0 0 0 0 0 2 3 6
箕島 2 0 1 0 0 0 0 0 0 0 3

 終盤、相手投手の乱れをついて和歌山工が逆転勝ちした。和歌山工は9回、二死から野口、宮川が連続四球、高橋の右中間二塁打で2者とも生還し同点。10回には先頭打者中村が三遊間安打。小川、岡畑、野口の3連続四球で押し出して勝ち越し点。宮川の左前安打、高橋の中前安打で2点を加え突き放した。
 箕島は1回内野安打の佐武を置き、清水がバックスクリーンへの本塁打を放ち2点を先制。さらに3回、北岡の左越え本塁打で加点したが、4回以降は打線がつながらなかった。5、7、10回と三塁まで走者を進めながら適時打が出ず、苦杯をなめた。

<決勝> 智辯和歌山 2-1 和歌山工
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
智辯和歌山 0 2 0 0 0 0 0 0 0 2
和歌山工 0 0 0 0 0 1 0 0 0 1

「先発で行け、と言われたのは今朝。前の試合ではカーブが悪かったので、それを低めにきっちり決めろ、と」。智辯和歌山の先発笠木投手は目を赤くして語った。
  2点をリードしていた6回、先頭打者宮川に四球。二死をとったものの盗塁を許し、再び中村に四球。走者一、二塁に。「ボールが決まらない」高嶋監督が「代われ」と告げる。だが笠木は「まだいけます」。
 しかし次打者に左前打。これを野手がはじく間に、二塁走者が生還し、1点差に迫られた。
 この時、代わってマウンドに立ったのが松野。2日前、県和歌山商戦で右肩に死球を受け、全治2週間の打撲。「30分しかもたないといわれた」痛み止めを打っての登板だ。
 直球が思いどおりに決まる。次打者を一塁ゴロに仕留め、ピンチを脱した。「元々僕が投げることになっていた。投げろと言われれば、がんばって投げるだけです」。7回から9回まで、球を外野に運ばせなかった。3年連続甲子園出場をかなえた継投策だった。
 「一番ほめてあげたいのは井口ですね」。高嶋監督が試合後、振り返った。2回、敵失で出塁した中本を置いて、井口が三遊間安打。続く園山も左前安打。左翼手が球の処理にもたついている間に中本は一気に三塁を駆け抜け本塁へ。先制の1点だった。
 「これでいける」。西中四球の後、岸辺の中前安打で園山も生還。この2点目が勝ち越し点となった。「練習中はよう井口を怒ったけど、捕手の彼が守備のかなめとなり、攻撃の糸口を作ってくれた」と監督は笑顔で話した。
 相手の校歌を聞いたあと、和歌山工の西田投手は、涙もほとんど見せず、淡々としていた。6試合のすべて完投、うち3回戦からは4連投。4試合目の対伊都戦あたりから疲労がたまってきた。腰の疲れがひどく、試合後マッサージに通う日々。それでも「今までで一番良いできだった、変化球も切れていた。ここまで来たのは、精神力でした」。
 2回の無死二、三塁のピンチにも、グラウンドで落ち着いて右手を挙げアウトカウントを確かめた。
 強豪智辯和歌山に10安打を浴びたものの、要所を踏ん張り抜いた。「楽しく投げられました」。最後の言葉は自信と満足にあふれていた。

全国大会

<1回戦> 東北 1-2 智辯和歌山
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
東北 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 1
智辯和歌山 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2

 智辯和歌山が継投で強打の東北をかわしサヨナラ勝ち。12回、先頭の井口が三遊間安打、バントで二進後、松野が左中間二塁打した。先発・有木の投打にわたる活躍も見逃せない。スライダーが効果的で、9回途中まで4安打の力投。2回、内角球に体が開かず、左翼へ運んだ先制本塁打も試合の流れを引き寄せた。
 東北は、4回無死一、二塁で二塁走者がけん制死、勝ち越しの機の11回は盗塁失敗など走塁ミスが目立った。主戦、佐藤真が持ち味を出しただけに、大振りした打線と、強引な攻めが悔やまれる。

<2回戦> 城北 2-5 智辯和歌山
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
城北 0 0 0 0 0 0 0 2 0 2
智辯和歌山 1 0 3 0 0 0 0 1 × 5

 智辯和歌山の勝因は攻守両面の積極さにあった。1回、城北の守りの乱れで1点を先取すると、3回は一死一、二塁とし、武内が0-2から2球続けてヒットエンドラン。併殺を焦った二塁手の失策を誘って1点。二死から井口が中越えに二塁打。4-0とした。好球を逃がさず打って出た強気が相手の守りを圧倒した感じだ。守っては後半のピンチを楠、松野、有木と思い切った継投で2失点でしのいだ。
 城北は前半、速いテンポの楠のペースに巻き込まれたのが惜しまれる。7回の一死満塁も連続三振で生かせなかった。

<3回戦> 徳島商 2-1 智辯和歌山
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
徳島商 1 1 0 0 0 0 0 0 0 2
智辯和歌山 0 0 0 0 0 0 1 0 0 1

 徳島商が効果的な先制攻撃で逃げ切った。1回、先頭の利光が死球、二盗に成功したあと、佐藤が右翼へ適時打して1点。2回にも平山の遊撃を強襲する二塁打とバントで好機をつかみ、横手の二塁への安打(不規則バウンド)で追加点をあげた。智辯和歌山・有木の高めに浮く球を積極的に狙ったのが成功した。
 智辯和歌山は、徳島商・川上の速球に遅れ気味で、追い込まれたあとはフォークボールに幻惑されて的がしぼり切れない。7回、ようやく「右狙い」に徹し、有木、岸辺の右前安打で1点を返したが及ばなかった。
 わずかな力の差が明暗を分けたが、両チームとも堅実な守りで引き締まった試合だった。