第82回<平成12年>全国高等学校野球選手権

和歌山大会

<準決勝> 南部 3-2 箕島
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
南部 0 0 2 0 0 0 0 0 0 1 3
箕島 0 0 0 1 0 1 0 0 0 0 2

 南部・奈須、箕島・寺村の見応えのある投げ合いは、守備の乱れで決着がついた。
 2-2で迎えた延長10回、南部は二死から敵失で二塁に進んだ橘が三盗。このとき、寺村が暴投し、球がバックネット前に転がる間に橘が本塁へすべり込んで決勝点を挙げた。
 先制したのは南部。3回、橘が右中間に2試合連続の本塁打で2点。箕島は4回、木下の左前適時打で1点を返し、6回には松尾の適時打で同点に追いついた。終わってみれば、南部4安打、箕島10安打で、南部の積極的な攻撃が勝利を呼んだ形だが、改めてミスの怖さを感じさせる試合であった。

<準決勝> 智辯和歌山 14-1 日高中津
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
智辯和歌山 1 1 8 0 0 0 0 0 4 14
日高中津 0 0 0 0 0 1 0 0 0 1

 選抜準優勝の智辯和歌山と春季県大会優勝の日高中津の試合は、智辯和歌山が大量得点して快勝した。
 智辯和歌山は日高中津の先発谷の立ち上がりを攻め、1回一死一、二塁から池辺の二塁打で先制。3回には池辺、後藤の連打と内野ゴロで1点、さらに2四球をはさむ6連続長短打で7点と、打者13人を送る猛攻で勝負を決めた。
 日高中津は春の近畿大会県予選の準決勝で智辯和歌山を破ったが、中家の力のある投球に抑えられ、6回一死二塁から、中元の適時打で意地を見せたが、前半の大量失点が重くのしかかった。

<決勝> 智辯和歌山 5-2 南部
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
智辯和歌山 2 0 0 0 0 0 0 1 2 5
南部 2 0 0 0 0 0 0 0 0 2

 戦後初めて2年連続同一チーム同士の対戦となった試合は、いきなり智辯和歌山が先制、すぐに南部が追いつく展開。その後は息詰まる投手戦となったが、終盤に智辯和歌山が連打で南部を突き放し、戦後記録を更新する5年連続10回目の優勝を決めた。
 2年連続同じチームの対戦となった決勝戦は見応えのある接戦となった。1回表智辯和歌山は先頭の小関がいきなり中前安打。堤野の犠打で二進し、武内の左中間二塁打で先制。さらに池辺の適時打でこの回計2点を奪った。
 南部もその裏すぐに反撃した。二死から遠藤が内野安打で出塁すると、橘の中前安打で二死一、三塁として暴投で1点返し、橘の三盗の後、中村の内野安打で同点に追いついた。
 2回以降は投手戦。冷静な智辯和歌山・山野と丁寧にコーナーをついた南部・那須の投げ合いとなった。
 試合が動いたのは8回。智辯和歌山は先頭の堤野が中前安打で出ると、武内がバントで進め、主砲・池辺の右前安打で勝ち越し。さらに9回にも青山、北橋の連続適時打で2点を追加、試合を決定づけた。
 南部は立ち上がり先制されながらも、その裏、3連打で同点に追いつく粘りを見せ、その後那須が見事な投球で智辯和歌山打線を抑えるなど互角の戦いぶりであったが、山野から追加点を奪うことができず、後半力尽きて18年ぶり4回目の優勝はならなかった。

全国大会

<1回戦> 新発田農 4-14 智辯和歌山
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
新発田農 1 0 0 0 1 1 1 0 0 4
智辯和歌山 0 1 2 2 0 3 6 0 × 14

 智辯和歌山は1回戦で新潟代表の新発田農と対戦、初回に1点先制されたが、2回に後藤の本塁打ですぐに同点。2点差に迫られた6回には武内の2点本塁打で突き放すなど、長打攻勢で新発田農を圧倒し、危なげない戦いぶりで初戦を突破した。
 初回、先発山野がいきなり先頭打者に二塁打を許し、犠打と適時打で1点先行されたが、2回に後藤の本塁打で追いつき、3、4回には4長短打で勝ち越し。2点差に追い上げられた6回、先頭の堤野の左前安打の後、武内の2点本塁打などで3点追加。続く7回にも7長短打で6点加え、計22点の猛攻を見せた。
 主戦山野は、制球が定まらず、苦しい投球となったが、粘り強く投げて要所を抑え、送りバントのミスや守備の乱れなど課題も残したが、猛打で2回戦に進出した。

<2回戦> 智辯和歌山 7-6 中京大中京
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
智辯和歌山 2 0 0 0 2 2 1 0 0 7
中京大中京 0 0 0 0 0 0 6 0 0 6

 序盤から得意の集中攻撃が出て、勝負強く点を積み重ねた智辯和歌山が、終盤のピンチを再三の好守で守りきり、中家、山野の継投で逃げ切った。
 試合は急展開した。1回、二死から四死球を足がかりに山野の適時打で2点を先取。5回も二死から連打で得点。6、7回にもそつなく加点した迎えた7回、好投していた中家が中京大中京打線につかまり、無死一、二塁から重盗をはさみ犠飛で1点。さらに連打に失策も絡んで一挙6点が奪われた。ここで急遽山野が救援して後続を断ったが、8回にも一死一、三塁のピンチ。ここで死球退場した正捕手の後藤の代役岡崎が中京の二盗を阻止し、相手に行きかけた流れを引き寄せた。
 中家は7回に打ち込まれたものの、6回まで3安打無四球の丁寧な投球で踏ん張りを見せ、山野も再三のピンチを落ち着いた投球でしのぎ、勝利に結びつけた。
中京大中京は中盤までに大量点を失ったが、7回に1点差に迫る集中攻撃を見せ、伝統校の底力を示した。

<3回戦> 智辯和歌山 11-7 PL学園
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
智辯和歌山 1 0 4 2 2 0 0 0 2 11
PL学園 0 0 1 0 2 2 2 0 0 7

 智辯和歌山は、3回の池辺と山野の本塁打、5回の山野の2打席連続の計3本の本塁打などで先行。終盤、PL学園に猛追を受けたが、9回にも1試合のチーム最多本塁打の大会記録に並ぶ後藤の本塁打などでダメを押し、準々決勝に進出した。
 長打力の差が出た試合であった。智辯和歌山は1点リードで迎えた3回、二死一塁から池辺が2点本塁打、直後の二死一塁から山野の中越の本塁打で4点追加。さらに5回にも山野の2打席連続の本塁打で2点差に追い上げられた9回には、後藤が貴重な追加点を左翼席に運び、追いすがるPL学園を振り切った。

<準々決勝> 柳川 6-7 智辯和歌山
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
柳川 0 3 0 0 3 0 0 0 0 0 0 6
智辯和歌山 0 0 1 1 0 0 0 4 0 0 7

 劇的なサヨナラ勝ちで、頂点まであと2つ。福岡代表の柳川高校と対戦した智辯和歌山は、先発中家が打ち込まれ、7回までに2-6とリードを許す苦しい展開。しかし、8回に武内と山野が本塁打を放ち同点に。さらに、延長11回二死一、二塁の好機で、後藤が右翼へサヨナラ安打を放ち、熱戦を制した。
 1-3で迎えた4回裏智辯和歌山は、二死二塁から中家の適時打で1点差に。しかし5回、一死一、三塁の場面で救援した松本がボークで失点、次の打者にも四球を与えて降板。マウンドを山野に託し、総力戦は激しさを増した。4点を追う8回、武内が右本塁打。さらに二死一、二塁から山野が左翼席に起死回生の3点本塁打で同点にすると、延長11回、後藤が右翼線にサヨナラ安打して決着をつけた。

<準決勝> 智辯和歌山 7-5 光星学院
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
智辯和歌山 1 1 1 0 0 0 2 2 0 7
光星学院 0 0 3 0 1 0 1 0 0 5

 強打を誇る智辯和歌山だが、この日は犠打や盗塁などで好機を広げ、着実に得点を重ねる手堅い攻めを見せ、守っても再三の美技で先発山野を盛り立てて競り勝ち、第79回大会以来、3年ぶり2度目の優勝を目指すことになった。
 智辯和歌山は序盤先制しながら、3回に死球と内野安打の一死一、三塁から北川に同点となる3点本塁打を打たれ、5回にはさらに1点を失い、逆転される苦しい展開となった。7回に山野の三塁打で再度逆転したが、その裏すぐに同点。先行すれば追いつかれる。そんな重苦しい雰囲気を主砲の一振りが破った。5-5の同点で迎えた8回二死一、二塁。4番の池辺の打球は低いライナーで二遊間を破り中堅手がはじく間に2人が還って勝ち越した。これまでの4試合でチームの本塁打数は8本。しかし、この日は12安打のうち10本が短打。長打に注目が集まる中、もう一つの強さを見せて、全国制覇まであと一つとなった。

<決勝> 智辯和歌山 11-6 東海大浦安
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
智辯和歌山 0 2 0 1 0 2 0 5 1 11
東海大浦安 0 1 2 0 2 1 0 0 0 6

 智辯和歌山は終盤に打線が爆発。千葉代表の東海大浦安に逆転勝ちし、3年ぶり2度目の全国優勝を果たした。和歌山大会から通算11試合連続の二けた安打に加え、選手権大会の通算チーム最多安打、最多本塁打、最多塁打、チーム最高打率の4つの記録を更新し、また、県勢としても通算100勝目を達成。圧倒的な打線に粘り強い投手陣がうまくかみ合い、春の選抜大会準優勝の雪辱を果たした。
 立ち上がりから追いつ追われつの展開で1点差で迎えた8回智辯和歌山は、一死二塁から山野の中越二塁打で同点し、さらに二死三塁で青山の中前適時打で勝ち越し。続く二死満塁の好機に堤野の左前安打と武内の二塁打で計5点を奪い、試合を決めた。序盤にリードを許して苦しい展開となったが、堤野の2本の本塁打などでしぶとく食い下がり、8回のラッキーイニングをものにして、記録づくめの優勝を飾った。
 東海大浦安は、単打を連ねて相手に食らいついた。3回は無安打で2点、5回は足を使った攻撃で2点を取り、リードする展開にもっていったが、主戦・浜名の3連投の疲れから疲労の色が濃く、後半逆転された。