第48回<昭和41年>全国高等学校野球選手権大会


県予選
 

<準決勝> 海南 8-2 田辺
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
海南 0 2 0 0 0 0 2 1 3 8
田辺 0 0 0 0 0 0 1 0 1 2

海南は球威に欠ける山根投手を、のびのびと打ちまくり、長打14本を放って田辺をくだし、決勝戦へ楽々とコマを進めた。
 2回、海南は一死後、三塁強襲安打の宮本と四球の後安が重盗に成功して二、三塁とし、前山が初球をあざやかに左中間三塁打して2点を先取、気をよくした海南は栗生の好投に支えられて終始優勢に試合を進め、7回にも連安打と投手暴投などで2点。8、9回にも6本の長短打で計4点を加えた。
 一方、田辺は1回、二死満塁の先制機を逃したのが痛く、栗生の速球とカーブを打ちあぐみ、得点のチャンスをつかめなかった。7回に長打2本でようやく1点、9回にも連続安打で1点を加えたがおよばなかった。

<準決勝> 県和商 2-4 向陽
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
県和商 0 0 0 0 2 0 0 0 0 2
向陽 0 0 0 0 0 2 2 0 × 4

 向陽は後半、ねばり強く反撃、6、7回の好機に上位打線が適時打を放って昨年の県大会優勝校、県和商高に見事逆転勝ちした。試合は前半、重い速球をびしびし決める県和商平野と下手投げからコーナーいっぱいねらう向陽吉田憲投手の息ずまる投げ合いが続いた。
 均衡が破れたのは5回、県和商はこの回二死一、二塁で平野が外角球をうまく合わせて右翼線を抜き2点をあげた。しかし向陽はしぶとく食い下がった。6回一死二、三塁から谷口の二塁ゴロで1点を返し、さらに池尾が中前に適時打して同点。7回、勢いに乗った向陽は一死後吉田憲が右前安打、木村が犠打で送り、湯川四球のあと菊池が2-1後高目直球を打って左翼右を深々と破り、見事逆転した。向陽の勝因の1つにはたびたびのピンチに3併殺を記録した鉄壁の守りがあげられる。

<決勝> 海南 4-8 向陽
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
海南 0 4 0 0 0 0 0 0 0 4
向陽 3 0 0 2 3 0 0 0 × 8

 “苦節13年”――。このことばは向陽ナインのために用意されていたという感じさえする。それ程に向陽の戦いのあとは苦しいものだった。準々決勝の対箕島戦以来逆転につぐ逆転で勝ち抜いたこのチームには闘志と気迫と粘りがみなぎっていた。この試合もいったん海南に逆転されながら、中盤勝負強い打撃を見せて見事にはね返した。海南の集中安打で2回、4-3とリードされたあと、向陽は、しつように食下がり4回、逆に海南の栗生をとらえた。
 この回、先頭の木村が二塁左を破って出塁、敵失と四球で無死満塁としたあと、土井の痛打は二塁正面に飛び、一瞬にして併殺、チャンスは去ったかにみえたが、二死後、一塁走者が盗塁して二、三塁とした後、勝負強い谷口が栗生の高目の球を右翼右にはね返して逆転した。さらに5回にも一死満塁から湯川が左越え二塁打して走者を一掃、大きく差を広げた。
 一方海南は3-0とリードされた2回、吉田の外角球をねらい打ち、栗生の右翼左二塁打を含む4安打と2つの四死球で一挙に逆転、このあたり海南の攻撃は破壊力があったが、3回以後、吉田が内角に沈む球を主球とする投球に切りかえたため、海南の打球はほとんどつまった内野ゴロとなり、好守を誇る向陽内野陣にはばまれた。海南の山下、栗生両投手はいずれも故障がたたり、苦しい投球だったが、内野のまずい守備も投手の足をひっぱっていた。

<紀和決勝> 向陽 1-3 郡山
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
向陽 0 0 1 0 0 0 0 0 0 1
郡山 2 0 0 0 0 0 0 1 × 3

 午后1時、プレイボール。向陽は初回から激しく攻めたてた。湯川が植村の速球をとらえてきれいに中前へ。菊池がこれをバントで送ったが、土井の投ゴロで湯川が二塁で刺され、二死一塁。このあと谷口がストレートの四球、池尻が死球で二死満塁の絶好のチャンス。森川監督が緑のメガホンを手にベンチを飛び出す。「それ行け」、しかし無念上野山が右翼前にたたいた安打性のゴロは、芝生に邪魔されて伸びず、一塁へ送られてアウト。
 その裏郡山打線は向陽吉田投手を打込んだ。吉田の調子はいまひとつだ。カウントを整えようと投げる球に威力がなく、1回裏死球と長短2本で郡山に2点を許し、苦しい試合となった。
 だが向陽はさすがねばり強い。3回表湯川の一打は地をはうような遊ゴロ、野手の前で大きくバウンドして幸運なヒット。逆転のチャンス到来、菊池がバントで送ったあと、土井の一撃は遊撃手を襲い、エラーを呼んだ。湯川は一挙に本塁へ――。1点を返して意気上る。しかし次の谷口が放った一打は左翼手のグラブに入って1点どまり。
 中盤はリリーフ栗原が大きなドロップで郡山打線を押え、投手戦の感があった。2-1で郡山リードのうち、向陽は8回打順が主軸にまわり、反撃のチャンスを迎えた。期待通り、一死後土井、谷口が連安打、しかしそのあと凡ゴロが続き、逆転機を断たれた。
 最終回、祈るような応援団のまなざしの中で先頭の富が三ゴロで倒れ、続く吉田もつまった二塁フライで早くも二死、ここで森山監督は最後ののぞみをかけて水本を代打に起用したが、植村投手の前に屈した。熱闘2時間27分、向陽ナインはすべてを出しきって敗れた。