第70回<昭和63年>全国高等学校野球選手権

和歌山大会

<準決勝> 橋本 0-9 高野山
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
橋本 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
高野山 0 0 1 0 0 0 8 0 × 9

 高野山が終盤猛打を爆発させ、橋本の初めての決勝進出を阻んだ。
 高野山は3回、先頭の吉本が中前打で出塁。盗塁と送りバントで一死三塁としたあと、坂本が2-2からの外角の直球を中前に打ち返して先制した。中盤は中村の丹念にコーナーをつく投球に3人ずつの攻撃を繰り返したが、7回、自慢の猛打が爆発して勝負を決めた。
 この回、無死から江川孝、阪本が連続中越え三塁打を放って口火を切り、さらに四球などで無死満塁とし、江川浩のスクイズ、吉本の左前打、死球、右犠飛など大技、小技を絡めて一挙に8得点、試合を決定づけた。中村の球が疲れのために浮いたことを差し引いても、しっかり呼び込んで確実なミートで鋭く振り抜く打法はすばらしかった。
 橋本は4回、二死から浦口がチーム初安打の左越え二塁打したが、あとが続かず無得点。9回には一死から森田が右前打したが、後続が連続右飛。植-江川孝の前に結局、この2安打に抑え込まれた。狙い球を絞り切れなかったのが惜しまれる。

<準決勝> 箕島 7-2 智辯
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
箕島 0 1 0 1 2 1 0 0 2 7
智辯 0 0 0 0 0 2 0 0 0 2

 箕島がそつのない攻めで好機を着実にものにして智辯和歌山を振り切った。
 箕島は2回、敵失をきっかけに角田、増田の連続安打で先制、さらに4回には一死一、三塁で、打者角田の時、いったんはスクイズを外され、二死二塁となったものの、角田は中越え三塁打を放ち計2点。変わりかかった流れを再び自陣へ引き戻した。
 5回にも、箕島は二死一、三塁で上中の遊撃左への内野安打で加点、打者西川の時、智辯和歌山の南方が暴投して4点目をあげた。さらに6回には、岡、増田の長短打で1点、9回も3長短打と送りバントなどで2点を奪う力強い試合運びで、智辯和歌山を突き放した。
 前半を増田に抑えられていた智辯和歌山は、6回、楠の中前安打を足がかりに二死満塁と攻め、土井の中前適時打と敵失で2点を返した。
 しかし、つきがなく、8回には無死一塁で杉山の痛烈な当たりが遊撃手の正面を突いて併殺打となるなど、好機を生かしきれなかった。

<決勝> 箕島 2-6 高野山
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
箕島 0 0 0 1 1 0 0 0 0 2
高野山 0 0 0 1 0 2 1 2 × 6

 1点リードされて迎えた6回、高野山は二死二塁の同点機をつかんだ。鈴木監督は次打者江川孝をベンチに呼んだ。そして「思い切って振ってこい」とひとこと。江川孝は大きく息をして打席へ向かった。
 5球目までは全部カーブで2-3.だが、江川孝は動かなかった。カーブが苦手ということと、どうにかしなければという気負いで金縛りに遭ったようになっていたのだ。6球目、この打席初めての直球をファウル。これで江川孝の緊張がほぐれた。「あれこれ考えず、なんでもきた球をたたこう」。一回打席をはずし、バットを握り直す。そして7球目。内角の直球、バットが自然に出た。打球は右中間へ。二塁走者、坂本はゆっくりと生還。江川孝は二塁を回って三塁へ。右翼手-二塁手-三塁手へと転送された箕島の返球が三塁手の前でそれた。江川孝は頭から本塁へ滑り込んだ。勝ち越しの3点目、箕島の選手たちの表情が一瞬沈んで見えた。
 高野山の粘りが見事だった。先取点を奪われたすぐあとの4回には、二死満塁から池上が外角低めの打ちにくいカーブを右前に運んで同点。逆転したあとの追加点がほしい7回には、相手のミスで無死三塁としたあと宮本が外角のカーブを中前にたたいた。「5、6点は取って打撃戦に持ち込みたい」。試合前に鈴木監督が話した通りの試合運びとなった。
 植を救援した宮本の好投も見逃せない。箕島の打線を相手に5回3分の2を投げ、散発5安打にかわした。気負いのない宮本の投球と気負って強振した箕島打線のコントラストが勝敗を左右したように見えた。
 監督20年目で初めての甲子園の土を踏む鈴木監督は「1点差でようやく勝った初戦の日高中津戦をはじめ、どの試合も中盤までは冷や汗の連続。後半に得点して勝負を決めて来たが楽な試合はひとつもなかった。この競い合いの中で一試合ごとに選手がたくましくなった」と大会5試合を1試合ずつ思い起こしながら話した。
 「チャレンジ―精神で」と試合前、監督も主将も話していた箕島。4回、四球の浜口をバントで送り、西川が右翼線へ二塁打、先制の1点。「これからの箕島のペース」と思わせた。その通り、5回にも増田が左前打、手堅く送ったあと、中西が右中間三塁打した。スタンドが期待した9回も、ついに終わった。ノーシードながら市和歌山商、星林、日高、智辯和歌山を倒して決勝に出た。「さすが箕島」とファンを喜ばせ、大会を大きく盛り上げた。

全国大会

<1回戦> 堀越 4-1 高野山
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
堀越 0 0 1 0 1 0 0 0 2 4
高野山 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1

 高野山の堅い守りに点差を広げることができなかった堀越は9回、一死から築野が遊撃内野安打。井上が送ったあと築野は三盗を決めた。ここで小森が右翼線に二塁打し3点目。さらに土橋の内野安打で一、三塁。阿部の初球の時、土橋が二盗を試みて一、二塁間で挟まれている間に小森が生還、決定的な1点を加えた。
 堀越は2回まで、高野山の先発植の緩い球を打たされて三者凡退していた。だが、引きつけて振り抜く鋭い打撃にかえて、3、5回に1点ずつを入れ優位に立った。また、高野山のいい当たりをよくさばいた二塁手井上の好守も、主戦の竹内をもり立てた。
 高野山は、堀越、竹内の角度ある重い速球をうちあぐんだ。しかし、9回、先頭の坂本が左翼へ本塁打。二死後も阪本が三遊間安打するなど最後まで食い下がる粘りが目を引いた。