第90回<平成20年>全国高等学校野球選手権

和歌山大会

<準決勝> 日高中津 18-4 市和歌山商
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
日高中津 7 0 0 0 3 2 0 6 0 18
市和歌山商 0 1 0 0 0 1 1 1 0 4

 両チームとも2ケタ安打の打撃戦。長打にまさる日高中津が市和歌山商に打ち勝って、6年ぶり5回目の決勝進出を果たした。
 日高中津が計18安打で8点を奪う猛攻。1回、井藤、浦東の四死球と敵失で無死満塁とし、木本の適時打で先制。さらに羽佐の四球で押し出し、奥山の商社一掃の三塁打、山本、井藤の長短打などで7点を奪った。5回には山本の左越えの2点本塁打などで3点。6回にも2点を加えて攻撃の手を緩めず、8回には木本の本塁打など6長短打で6点と、市和商の4投手から9本の長打を含む18安打を放って完勝した。エース木本は6回まで10安打を浴びながら2失点に抑えた。
 市和歌山商は2回、二塁打の寺井が二死後に森の三塁打で生還。さらに6回、代打の林の安打、辻の二塁打で無死2,3塁とし、森の左犠飛で1点。7回には内野ゴロで、8回にも押し出しなどで1点ずつ返し、執念を見せた。しかし、立ち上がりの失点が大きく響き、前半の好機も併殺などで得点に結びつけられず、敗れ去った。

<準決勝> 智辯和歌山 7-2 串本
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
智辯和歌山 0 1 0 0 0 0 3 0 3 7
串本 1 0 0 0 0 1 0 0 0 2

 昨年の覇者・智辯和歌山が1回に先制され、6回には勝ち越されるという苦しい展開。しかし7回に坂口が4試合連続本塁打で逆転し、30年ぶりの4強入りで勢いに乗る串本を下した。
 智辯和歌山は終盤、4番の一発で試合を決めた。1点を追う7回、浦田の四球と勝谷の左前安打で二死1,2塁。続く4番坂口が左中間に3点本塁打を放ち逆転。勢いに乗る9回には、外濱の中前安打、勝谷の右翼線二塁打で無死2,3塁の好機をつくり、敵失で外濱が生還。さらに森本の中越えの二塁打、高橋の犠飛で計3点を加えた。先発の芝田は立ち上がり犠飛で先制点を許したが、6回に本塁打を打たれるまでテンポのいい投球で串本打線に三塁を踏ませない投球を見せ、救援した林も後続を断った。
 串本は1回、右前安打の船井が犠打などで三進し、岡本の犠飛で先制。幸先のいいすべり出しとなった。同点で迎えた6回には2番の芝の左越えの本塁打で勝ち越すなど、中盤まで昨夏の覇者と互角の戦いだった。主戦・岡本は智辯打線に果敢に挑んだ。立ち上がりからピンチを招いたが、忠実に真っ向から勝負をして抑えるなど、139球の力投を見せ、懸命のプレーぶりは観衆の感動を呼ぶものであった。

<決勝> 日高中津 3-5 智辯和歌山
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
日高中津 0 0 0 0 1 0 0 2 0 3
智辯和歌山 0 0 1 1 0 0 3 0 × 5

 決勝戦は、日高中津・木本、智辯和歌山・岡田の両エースの力のこもった投げ合いとなったが、投打がしっかりかみあった智辯和歌山が5-3で日高中津を破り4年連続16回目の甲子園出場を決めた。
 9回二死。智辯和歌山の2年生エース岡田は、気合の入った表情で直球を投げ続けた。しかし直球にタイミングが合っているとみて、ボール気味の低めのスライダーで日高中津の山本のバットを空をきらせて、試合終了。岡田は初回から圧巻の投球を見せた。伸びのある直球が両コーナーに決まる。変化球の切れも鋭く、相手打者のバットは次々と空を切り、猛打で勝ち上がってきた日高中津打線を5安打に抑えた。
 その岡田の好投に打線も応えた。3回一死3塁。打席に入った坂口は中堅方向を意識して高めの球を振りぬき、狙い通りの中犠飛で先制。4回には先頭打者の田甫が初球を左翼席中段まで運んだ。7回二死、1,2塁。追加点のほしい場面。打者は再び坂口。外角低めいっぱいのスライダーを中前にはじき返して1点を追加した。続く森本も左越えに2点二塁打を放ち、4点差に突き放し、4年連続の優勝を確実なものにした。
 リードされても日高中津は食らいついた。2点差の5回、奥山の内野安打と里和の四球で一死1,2塁。二塁走者を刺そうとした捕手・森本のけん制が悪送球となる間に走者は三進し、さらに捕逸で1点を返した。4点差となった8回。一死後、森のバント安打と井藤の二塁打で2,3塁。浦東の中犠飛で1点を返す。続く大川の左前適時打で2塁から井藤が生還して2点差となったが、4番木本は内野フライに倒れた。
 今大会屈指の好投手、木本は9安打を浴びながらもピンチを三振で切り抜けるなど力投した。しかしエースで4番という重荷があったのか、得意の直球に伸びを欠いて智辯打線に狙いうちをされ、あと一歩のところで惜しくも敗れた。
 今年の選手権大会の抽選は北京オリンピックの関係で決勝戦直後に行われ、智辯和歌山の初戦は愛媛県代表の済美高校と対戦することになった。

全国大会

<1回戦> 智辯和歌山 3-0 済美
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
智辯和歌山 0 0 1 1 0 1 0 0 0 3
済美 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

 4年連続出場の智辯和歌山は愛媛の強豪・済美と対戦。4番坂口がチャンスで撃ち、エース岡田が6安打に抑えて完封するなど、投打がかみ合って強力打線対決を制した。
 大会屈指のスラッガー、坂口が4番打者の本領を発揮した。3回、二死後に勝谷が内野安打で出塁し、続く坂口がスライダーをフルスイング。打球は左越えの二塁打。勝谷が一塁から全力疾走で本塁に滑り込む。この先制点で智辯は試合の流れを一気に呼び込んだ。4回、一死満塁の好機に北畠の内野ゴロで1点追加。6回には二死2塁から浦田の中前適時打でさらに追加点を挙げたが、バントや走塁ミスなど課題も残った。
 先発の岡田は立ち上がり緊張からか制球が定まらず、毎回四球を出してピンチを招いたが、辛抱強く投げて本塁を踏ませず、終盤も味方の好守にも助けられて済美の反撃をしのぎ、今大会完封一番乗りを果たした。
 済美は前半、制球がままならない智辯和歌山の岡田から四球などで再三走者を出しながら得点できず、中盤以降は防戦一方となり最後まであきらめずに食い下がったが、惜敗した。

<2回戦> 智辯和歌山 5-2 木更津総合
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
智辯和歌山 0 1 0 0 3 0 1 0 0 5
木更津総合 0 2 0 0 0 0 0 0 0 2

 みせた!猛攻17安打。智辯和歌山は木更津総合と対戦、5-2と快勝した。智辯和歌山打線は木更津総合の田中と淡路に次々と安打を浴びせ、東千葉大会、甲子園1回戦と1試合1失点以内に抑えてきた両エースから5点をもぎとった。
 スライダーではなく直球。「狙い球」を瞬時に変えたことで智辯和歌山打線は好投手田中攻略に成功した。1点リードされた5回表、無死3塁。「逃さず打つ」芝田は2球目、狙っていた直球を思いきり振って左翼線二塁打。浦田が本塁を踏み、同点。芝田に続き勝谷、坂口も直球を打ち返し、この回計3点をあげ、リードを奪った。7回にも岡田の左前適時打で貴重な追加点をあげて勝負を決めた。
 先発岡田はこの日も力投を見せた。2回に失策絡みで失点したが、4回のピンチでは3塁走者のスタートに気づき、カーブを急きょボール球にしてスクイズを失敗させるなど、相手打線を7安打に抑えて1回戦に続いて完勝勝ちをした。
 木更津総合は2回、相手の守備の乱れから2点をとり一度は逆転したが、その後、岡田のコースを突く丁寧な投球にかわされた。

<3回戦> 智辯和歌山 15-3 駒大岩見沢
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
智辯和歌山 0 0 0 0 2 0 0 11 2 15
駒大岩見沢 0 1 0 0 0 2 0 0 0 3

 土壇場で猛打爆発―。智辯和歌山は駒大岩見沢を15-3で下し2年ぶりのベスト8進出を決めた。1点差を追う8回、坂口2本、勝谷1本と3本塁打を含む8安打で計11点をたたき出し、一気に逆転した。智辯和歌山の1イニング3本塁打、坂口の1イニング2本塁打は選手権大会初の大記録である。
 鳴りを潜めていた智辯打線が爆発したのは8回。芝田、勝谷の連続安打で無死1,2塁。続く坂口が初球をバックスクリーンへたたき込む。森本も中前安打、さらに高橋は犠打野選…。止まらない。死球や敵失、芝田の適時打などで7点。2度目の打席の勝谷が初球を中越え本塁打。さらに坂口もこの回2本目の本塁打で計11点を奪い、9回にも2点を加え、さまざまな記録づくめの勝利となった。甲子園初登板の芝田は断ち上がりから得意のスライダーが決まり、6三振を奪う力投を見せた。
 駒大岩見沢の板木は中盤まで的を絞らせない投球で智辯打線を抑えたが、8回に打ち込まれ、力負けをした。

<準々決勝> 智辯和歌山 10-13 常葉菊川
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
智辯和歌山 0 1 0 0 1 0 0 4 4 10
常葉菊川 0 0 0 0 3 10 0 0 × 13

 猛反撃、あと一歩だった。智辯和歌山は準々決勝で常葉菊川と対戦。フルスイングで立ち向かってくる常葉菊川打線に13点を奪われた。それでもあきらめず、8,9回に4点ずつあげ、底力を見せたが、あと3点届かなかった。
 奇跡の再現を願った。9回二死走者なし。追う差は3点。打者は坂口。常葉菊川のエース戸狩の初球。快音が響いたが、三塁への痛烈なゴロでアウト。この瞬間智辯の夏は終わった。序盤でチャンスをつくりながら決定打が出ない。この日もそんな展開だった。1回以外は何度も塁を埋めながら7回まで2点どまり。ようやく打線に火が付いたのは8回。先頭の西川の三塁打を足場に4点を返す。9回も浦田の2点本塁打などで3点差まで迫った。しかし、反撃もここまで。無死一塁から勝谷の打球は右前に抜けそうだったが。相手の好守備で併殺となり万事休す、準決勝進出はならなかった。