第91回<平成21年>全国高等学校野球選手権

和歌山大会

<準決勝> 智辯和歌山 4-0 紀北工
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
智辯和歌山 2 1 1 0 0 0 0 0 0 4
紀北工 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

 智辯・岡田、紀北工・辻本の無失点投手の対決となった試合は、智辯が序盤の好機を着実に生かし、決勝へ進出した。
 智辯は辻本の立ち上がりを攻めた。1回、先頭の大畑らの3連続四球で満塁とし、門口の一ゴロが失策となって2点を先制。2回には大畑が今大会2本目の本塁打を左翼席に運んだ。続く3回、先頭の山本が左前安打で出塁。5番門口の犠打が悪送球となって、山本が一挙に本塁をついて加点し、試合の主導権を握った。
 エース岡田は初回、3安打を打たれる不安定な立ち上がりだった。しかし併殺で切り抜けると、2回からは打たせて取る投球で紀北工業打線を4安打無四球に抑え、2試合連続で完封した。
 初めて準決勝に進んだ紀北工は1回に南垣内、木下の連打で好機を作り、4回には安打の南垣内が犠打と暴投で三進したが、決定打を欠いた。3試合、25回無失点を続けてきた辻本は制球に苦しみながらも強打の智辯打線を3安打に抑える好投をみせたが、力尽きた。

<準決勝> 南部 3-1 和歌山商
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
南部 0 0 2 0 1 0 0 0 0 3
和歌山商 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1

 南部はそつのない攻撃で和歌山商を振り切り、8年ぶりの決勝進出を決めた。
 南部は3回、山田、津村の連続安打と死球で満塁とし、4番上村の中前安打で2点を先制。1点差となった5回には内野安打の津村が二盗に成功して好機を作り、鍋屋が右中間二塁打を放って貴重な追加点を挙げた。数少ない好機を確実に得点して粘る和歌山商に競り勝った。
 4回の二死2,3塁のピンチにマウンドに上がった井口は切れのあるスライダーを織り交ぜて2安打に抑え、7奪三振の好投。2試合連続のサヨナラ本塁打で波に乗る和歌山商打線を抑えた。
 和歌山商は4回二死から山路、安本、下本の3連続長短打で1点をかえし、5回以降毎回のように救援した南部の井口を攻めた。しかし、5回、先頭の沖殿の二塁打、6回の一死1,2塁、7回の二死2塁、8回の一死2塁のいずれの好機も後続を断たれた。4回から登板した下本は5回を除いて南部打線を1安打に抑える好投をみせたが、無念の涙を飲む結果となった。

<決勝> 智辯和歌山 3-0 南部
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
智辯和歌山 0 2 0 0 0 0 1 0 0 3
南部 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

 智辯和歌山は2回に瀬戸の三塁打などで2点を先制し、エース岡田の力投で南部を3-0で破って、5年連続17回目の優勝を果たした。
 ズバッと決めた。9回二死3塁。智辯の岡田が投じた112球目は内角の直球。「今まで受けてきたなかで最高のボール」(平野)が打者の胸元のミットに食い込んだ。
 今年は守りのチームというように、この日も数少ない好機を生かした。2回、死球の山本を犠打で送り、瀬戸の右翼線への三塁打、続く平野の右前適時打で計2点を先制。7回には安打の西川を城山が着実に送り、岩佐戸の中前適時打で加点した。投げては岡田が強打の南部打線を3安打に抑え、12三振を奪って完封。岡田は今大会試合連続完封を含む4試合32回3分の1を無失点で、計42奪三振の快投をみせ、優勝の原動力となった。
 南部は積極的な走塁で好機を広げたが、そのたびに智辯の岡田に後続を断たれた。2点をリードされた6回。中前安打を放って出塁した木下は、次の津村の投ゴロで2塁に進塁。さらに三盗を成功したこの試合初の3塁走者。だが、火縄は遊ゴロに打ち取られて無得点。最終回も無死から津村が敵失で出塁したが、後続を断たれた。初回の一死2塁の好機を逸したのが最後まで響いた。
 今大会初めて先発した井口は決め球にスライダーと直球を使いさけ、丹念にコーナーをついて8安打を打たれながらも3点に抑える力投をみせたが、惜しくも敗れた。

全国大会

  1 2 3 4 5 6 7 8 9
智弁和歌山 0 0 1 0 0 1 0 0 0 2
滋賀学園 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

 智辯和歌山は、守って勝つ今年の本領を発揮し、2-0で滋賀学園を下し、初戦を突破した。
 智辯は3回一死から大畑が左前安打で出塁。続く岩佐戸との間のヒット・エンド・ラン崩れの間に二塁に滑り込んだ。その直後、岩佐戸が左越二塁打を放って先制点を挙げた。6回、先頭の西川が放った「会心の当たり」という打球は中越えの二塁打。続く山本の中フライで三塁に進んだ後、岡田の左フライで本塁を陥れ、貴重な追加点となった。
 立ち上がりが心配された先発の岡田は直球の威力、スライダーの切れが抜群で、滋賀打線を被安打2、すべて空振りの13奪三振で完封。和歌山大会から続いている無失点を41回3分の1までのばした。
 滋賀学園は1回先頭の疋田が二塁打を放って以降、打線が沈黙。盗塁など機動力で食い下がったが、わずか2安打。岡田の直球に力負けし、スライダーに翻弄されてなすすべがなかった。

<2回戦> 智辯和歌山 8-5 札幌第一 
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
智辯和歌山 0 0 2 0 0 0 2 0 4 8
札幌第一 0 2 1 2 0 0 0 0 0 5

 智辯和歌山は、エース岡田が今夏初めて失点し、札幌第一にリードされる苦しい展開だったが、控えの3年生が底力を発揮し、土壇場で勝利をもぎ取った。
 初回を難なく抑えた岡田が2回突如乱れた。死球のあと、送りバントを二塁に送球したが野選に。さらに味方の失策でピンチが広がり、自らの暴投で失点。3,4回にも失点が続き、なかなか流れを引き寄せられなかった。しかし、この苦しい展開を打ち破ってのは打線であった。2点を先行された直後の3回、岩佐戸、西川の連打で追いつく。3点リードされた7回、一死から平野、北畠の連打で1,3塁のチャンス。代打の三宅の二ゴロを失策でまず1点。続く代打の左向の中前敵打で1点差に追い上げた。そして9回。先頭の北畠が左前安打で出塁し、門口が送って一死2塁。続く喜多の左中間の二塁打で同点に追いついた。勢いは止まらない。当たっている大畑が二塁打でつなぎ、四球をはさんで西川が2点二塁打。さらにだめ押し点をたたき出したのは途中出場の外濱、高々とレフトへ打ち上げて8点目の犠牲フライとなった。その裏を岡田が3人で抑え、髙嶋監督は甲子園通算最多勝利の歴代1位(58勝)に並んだ。
 札幌第一は冨田、畑らがスライダーを捕らえ好打したが、中盤から立ち直った岡田を攻めきれなかった。

<3回戦> 都城商 4-1 智辯和歌山
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
都城商 3 0 0 1 0 0 0 0 0 4
智辯和歌山 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1

 智辯和歌山は都城商と対戦、終始相手にリードされる苦しい展開となり、1-4で敗れた。
 立ち上がり3点を失った智辯和歌山はその裏、先頭の大畑が四球と捕逸で2塁に進み、西川のゴロを一塁手がトンネルして無安打で1点を返した。その後2回、4回に得点圏に走者を送りながら得点できず、6回には敵失と岩佐戸の中前安打で無死1,3塁とチャンスを広げたが、タイムリーがでない。8回にも、一死から大畑、岩佐戸のコンビが連打で反撃の好機を作った。だが、西川が三振にたおれ、代打の山本も右フライで無得点。9回にも二死から北畠が右前安打を放って粘りをみせたが、万事休す。再三の好機に中軸で1本でなかったのが最後まで響いた。
 立ち上がりが課題の岡田は慎重にいったが、先頭打者の二ゴロが走者の足が速く内野安打になった。二死を取ったがリズムに乗れず、四球をはさんで連打をあびて3点を先制された。2回以降、走者をだしながらもていねいな投球で1点に抑えていたが、打線の救援がなく、敗れ去った。
 都城商は1回、智辯・岡田の立ち上がりを攻め、松原、富永の連続適時打で3点を先取。4回にも藤本の右前安打で加点した。右腕・新西はコーナーをつくていねいな投球で5安打、10奪三振の力投で完投勝ちをした。